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第5回企画展「戦争と文学 散文編」
三重の作家たちと戦争
昭和の激動期、文学者は戦争にどう関わったのか。
三重県ゆかりの文学者たちも、流れに身をまかせ、あるいは抗し、それぞれに赤裸々な姿を見せています。今回は、特に散文の分野で活躍した人々、横光利一、中谷孝雄、丹羽文雄、田村泰次郎、駒田信二、伊藤桂一の6人に焦点をあてます。
郷土の作家たちの生き方を通して、戦後50年の意味を問い直す契機になればと考えています。
横光利一
少年時代、伊賀で育つ。小説家。1936年、ベルリンオリンピックの取材で渡欧の途上、二・二六事件の報を聞く。戦時中は文芸銃後運動、文芸報国会のため各地で講演。戦後、文学者としての戦争責任を問われた。
丹羽文雄
四日市市出身。小説家。ペン部隊陸軍班員として武漢作戦、海軍報道班員としてツラギ夜戦に参加するなど3回の従軍体験から、「還らぬ中隊」「海戦」ほかの戦争小説を書く。戦後、それらが問題にもなった。
中谷孝雄
一志郡七栗村出身。小説家。亀井勝一郎らと『日本浪曼派』を創刊。武漢作戦にペン部隊陸軍班の一員として参加する。また予備役少尉としてニューギニアに出征、その体験を「のどかな戦場」「その前後」に描く。
駒田信二
少年時代、安濃郡安西村で育つ。小説家、中国文学者。京都の野砲連隊に入隊、中国各地を転戦ののち、中国国民軍の捕虜となる。「人間新人賞」を受賞した「脱出」のほか、「山河」「日暦」などの戦争小説がある。
伊藤桂一
三重郡神前村出身。詩人、小説家。習志野騎兵第十五連隊、のち佐倉歩兵第百五十七連隊に従軍し、中国大陸を転戦。「螢の河」「悲しき戦記」「静かなノモンハン」など、戦記物を数多く書いている。
田村泰次郎
三重郡富田村出身。小説家。陸軍に応召、久居市三十三連隊で教育訓練を受ける。敗戦まで中国大陸を転戦、また宣撫班で中国人民とも深く関った。長い軍隊生活から「肉体の悪魔」「春婦伝」「蝗」などが生まれた。
展示期間:平成7年8月6日(日曜日)から8月20日(日曜日)