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第25回企画展「田村泰次郎文庫の魅力 一般図書・一般雑誌より」2
戦後の本著名人の本
目録連番 一般図書2997
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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亡命十六年 | 野坂参三 | 1946年 | 時事通信社 | 無署名 |
野坂參三は元日本共産党議長。本書は、野坂が1931年から1946年まで、ソ連・中国に亡命していた回想記である。従軍中に一兵卒として中国共産党軍と交戦した経験を持つ田村の蔵書に本書が含まれているのは実に似つかわしい。同年刊の版は全国11館が所蔵している。
目録連番 一般図書1492
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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シナリオ方法論 | 野田高梧 | 1948年 | シナリオ社 | 著名人 |
野田高梧は、『晩春』(1949年)、『東京物語』(1953年)など、小津安二郎監督作品の脚本を多く書いた事で知られる映画脚本家である。野田の署名贈呈本は本書のみである。
目録連番 一般図書3303
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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ヨーロッパの旅 | 勅使河原蒼風 | 1956年 | 東峰書房 | 著名人 |
勅使河原蒼風は草月流いけばなの創始者、日本いけばな芸術協会初代理事長。この本の出た年に田村夫妻も欧州を訪れ、やはり同様にパリの藤田嗣治画伯と交流している。勅使河原の署名贈呈本は本書のみである。
目録連番 一般図書2388
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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七億の隣人 | 宇都宮徳馬 | 1964年 | 東潮社 | 著名人 |
宇都宮徳馬は衆議院議員(自由民主党・当選10回)、参議院議員(無所属・当選2回)。軍縮や日中友好に尽力した。中国への興味を抱いていた田村にいかにも似つかわしい蔵書である。宇都宮の署名贈呈本は本書のみである。
目録連番 一般図書999
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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国語の建設 | 林 武 | 1971年 | 講談社 | 著名人 |
林武は洋画家、東京芸術大学教授。代々国学者の家系に生まれた林は、国語問題協議会会長も務めていた。同会の推薦図書である福田恆存「私の國語教室」も、田村文庫に署名贈呈本がある。林の署名贈呈本は本書のみである。
目録連番 一般図書1721
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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随想 生ぐさ太公望 | 児玉誉士夫 | 1975年 | 広済堂 | 著名人 |
児玉誉士夫は右翼運動家、戦後「政財界の黒幕」とされ、1981年ロッキード事件で広く世に知られた。本書末尾の「解説にかえて」を、児玉の釣り仲間で本文中にも登場する、田村とも交流のあった作家の林房雄が書いている。児玉の署名贈呈本は本書のみである。
三重県ゆかりの本
目録連番 一般図書870
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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月仙雑纂 | 月 仙 | 未詳 | 未詳 | 三重県 |
「月仙」とは、いわゆる「月遷上人」のこと。江戸時代後期の画家。円山応挙門下で絵を学び、寂照寺(現伊勢市)住職となってからは、社会慈善事業にも功績があった。本書は、月遷上人に関する資料を集め翻刻したもの。編者・刊年ともに未詳であるが、明治以降の出版であるのは確かである。
目録連番 一般図書688
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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郷土富田(「古茂里」五号) | 1931年 | 於茂千也函蝠堂 | 三重県 |
本書は和綴本の体裁をとっており、「郷土とみだ(『古茂里』五号)」と「富田小唄」(発行:土曜倶樂部)の合本である。発行所は「おもちやばこ・こうもりどう」とでも読むのであろうか。いずれにせよ、昭和初年の富田町(現四日市市)の文化活動を伝える貴重な資料である。
目録連番 一般図書2651
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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薔薇合戦 上巻 | 丹羽文雄 | 1937年 | 竹村書房 | 三重県 |
丹羽文雄氏は四日市市・富田中(現四日市高校)出身の作家で、共に田村の先輩にあたる。文芸雑誌「文学者」を主宰し、多くの作家を世に出した。田村との交流も古くかつ深い。丹羽の署名贈呈本は本書を含めて4冊であるが、他に署名のない初版本は数多い。
目録連番 一般図書442
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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鬼の言葉 | 江戸川乱歩 | 1936年 | 春秋社 | 三重県 |
江戸川乱歩は名張市出身、日本の推理小説作家の草分け的存在である。本書の副題は「感想集」とあるが、実際は実作者江戸川による「探偵小説」論集といえる。本書と同年に出版された版は、全国の公共図書館では、5館が所蔵するのみである。
目録連番 一般図書365
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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江戸川乱歩先生華甲記念文集 | 1954年 | 中島河太郎 | 三重県 |
本書は1949年創刊の探偵小説雑誌「黄色の部屋」の第6巻第2号で、奥付に「600部限定・非売」とある。巻末の「江戸川乱歩先生年譜 並に著作総目録」(中島河太郎編)は51ページに及ぶ。山田風太郎や高木彬光など全30名の寄稿を載せている。
目録連番 一般図書2564
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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敗北の夜 | 近藤啓太郎 | 1957年 | 六興出版部 | 三重県 |
近藤啓太郎は四日市出身、いわゆる「第3の新人」と呼ばれる作家の一人である。丹羽文雄主宰の「文学者」に参加し、作家への道が開けた。近藤の署名贈呈本は本書のみである。
目録連番 一般図書827
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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黒い招待券:北園克衛短編集 | 北園克衛 | 1964年 | MIRA CENTER | 三重県 |
北園克衛は昨年生誕100年を迎えた伊勢市出身のモダニズム詩人。本書は短編小説集。装幀・製本にも北園の美的感性が溢れている。北園の署名贈呈本は本書のみである。
目録連番 一般図書456
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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おろしや国酔夢譚 | 井上靖 | 1968年 | 文芸春秋 | 三重県 |
井上靖は作家。本書は、鈴鹿市出身の船乗り大黒屋光太夫のロシア漂流と滞在、帰郷体験を題材にした歴史小説である(のちに同題で映画化された)。井上の署名本は本書の他、『詩集 運河』(1967年)と『私の歴史小説三編』(1977年)がある。
目録連番 一般雑誌197
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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近畿春秋 創刊号 | 1946年 | 伊勢新聞社 | 三重県 |
県内総合雑誌。特輯「文化国家への構想」から座談会「新圓(オカネ)はどこにあるか」まで、硬軟とりまぜた内容となっている。「第一回近畿文学入選者」には、瀬田榮之助や山中智恵子の名前が見える。表紙は中村左洲。明治から昭和にかけて活躍した二見町出身の画家である。
目録連番 一般雑誌90
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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伊勢文学 第八号 | 1947年 | 伊勢文学グループ | 三重県 |
副題は「竹内浩三特輯号」。手書き・ガリ版刷りによる同人誌である。竹内の遺稿が世に出たのも本書があればこそである。現在広く知られている「骨のうたふ」は、友人中井利亮の手が入っているが、本誌には竹内が読んだままと思われる「骨のうたふ」が収められている。
目録連番 一般雑誌784
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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展望三重 創刊号 | 1951年 | 三重県民生文化協会出版部 | 三重県 |
総合雑誌。「県民の文化向上...県の紹介宣伝」(編輯後記)が目的なだけに、内容は生真面目。「読者文芸」の選者は、誌が北園克衛、俳句が橋本鶏二など、豪華な顔ぶれとなっている。表紙は岩中徳次郎。戦後、三重県で在住・活躍した洋画家で、本誌発行時は津市に在住していた。
目録連番 一般雑誌785
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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三重文学 創刊号 | 1951年 | 三重文学会 | 三重県 |
文芸雑誌。寄稿者に、中野嘉一、浜口長生らの名前が見える。編集後記に「本紙創刊と相前後して永らく休刊中だった『三重詩人』が九集を、...又、『歴象』が...創刊、各々発行された。御同慶にたえない。」とあり、当時の事情をよく物語っている。
戦争関係の本
目録連番 一般図書2943
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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北 京 | 阿部知二 | 1938年 | 第一書房 | 戦争 |
阿部知二は昭和初年から活躍した小説家・評論家・英文学者。阿部や舟橋聖一の創刊した雑誌「行動」に、新進時代の田村は文章を幾度も掲載している。本書は小説。阿部の署名贈呈本は本書と『ヨーロッパ紀行』(1951年)の2冊である。
目録連番 一般図書1615
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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従軍日記 | 井上友一郎 | 1939年 | 竹村書房 | 戦争 |
井上友一郎は小説家である。田村とは早大在学中に知り合い、以降、深く長い交流を持つ。本書は井上が1938年の武漢攻略戦に従軍した体験をもとにした小説で、田村が末尾の「跋」を書いている。井上の署名贈呈本は本書以降、『黒船抄』(1967年)まで全22冊あり、田村文庫の中で最も多い。
目録連番 一般図書1957
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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大陸開拓 | 福田清人 | 1939年 | 作品社 | 戦争 |
福田清人は小説家・児童文学者・近代文学研究家。本書は、福田が同年「大陸開拓文芸懇話会派遣員」として、伊藤整や田村らとともに「北支、蒙疆地帯」へ行った時の報告と所感をまとめたものである。福田の署名贈呈本は本書と『日輪兵舎』(1939年)、『句集 坂鳥』(1980年)の3冊である。
目録連番 一般図書1182
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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山中放浪 | 今日出海 | 1949年 | 日々谷出版社 | 戦争 |
今日出海は小説家・初代文化庁長官。今東光はその長兄にあたる。本書は、今がフィリピンでの従軍中、敗走する日本軍に従って5ヶ月間の放浪の後、九死に一生を得て生還した体験を綴った手記である。今の署名贈呈本は本書と『人間研究』(1951年)の2冊である。
目録連番 一般図書1531
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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真空地帯 | 野間宏 | 1952年 | 河出書房 | 戦争 |
野間宏は椎名鱗三や梅崎春生らとともに、「第一次戦後派」と呼ばれる作家の一人である。本書は、陸軍内務班での野間自身の軍隊体験をもとにした小説である。野間の署名贈呈本は本書のみである。
目録連番 一般図書3097
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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南の島に雪が降る | 加東大介 | 1961年 | 文芸春秋新社 | 戦争 |
加東大介は、黒澤明監督「七人の侍」などの作品で知られる俳優である。本書は、加東がニューギニアで従軍中、現地で演芸団を作り芝居をしていた体験をまとめた手記で、同年加東自身の主演で映画化された。加東の署名贈呈本は本書のみである。
目録連番 一般図書2031
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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大東亜戦争肯定論 | 林房雄 | 1965年 | 番町書房 | 戦争 |
林房雄は大正末年、プロレタリア作家として出発し、幾度かの検挙・収監の後、いわゆる「転向」した小説家である。林自身は1937年、中央公論社の特派員として上海戦線に従軍した体験を持つ。本書は評論である。林の署名贈呈本は本書のみである。
目録連番 一般図書814
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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暗い波濤 上 | 阿川弘之 | 1974年 | 新潮社 | 戦争 |
阿川弘之は海軍将校として従軍した体験を持ち、復員後、文学活動を開始した小説家である。本書は小説である。阿川の署名贈呈本は、本書の他、『カリフォルニヤ』(1959年)、『空旅・船旅・汽車の旅』(1960年)、『山本五十六』(1965年)、『鮎の宿』(1975年)の5冊である。
目録連番 一般図書1460
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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支那事変記念写真帖 | 1940年 | 河村部隊(ほか) | 戦争 |
本書のような、部隊毎の写真帖がこの時期多数出版されていて、本書もそのうちの一つである。類書は全国の公共図書館に何点か所蔵されているが、本部隊のものは他に所蔵がない。本書が出版されたのは、田村が再召集を受け、中国山西省に出征した1940年5月である。
目録連番 一般図書1943
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
---|---|---|---|---|
太平洋戦争日本陸軍戦力喪失一覧図 | 日本地図(編) | 1947年 | 日本地図 | 戦争 |
自身、中国戦線で5年余を戦い、自身が離れた後、所属部隊が沖縄で全滅した田村にとって、本図の示す「喪失」とは、実に生々しい意味を持っていたに違いないと思われる。本図は1985年に復刻されたが、1947年出版の本図を所蔵している公共図書館は全国で他に1館のみである。
目録連番 一般雑誌12
書名 | 著者 | 刊年 | 発行所 | 備考 |
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朝日新聞 東京 縮刷版 昭和16年12月号 | 1942年 | 朝日新聞東京本社 | 戦争 |
田村文庫には、朝日新聞の縮刷版が本誌以降、1944年12月分まで所蔵があり、戦時を伝える貴重な資料である。当時の縮刷版は後に復刻されており、本誌も1992年に復刻版が出されているが、当所蔵資料は1942年当時のものである。
戦後すぐに創刊・復刊された一般雑誌
目録連番 一般雑誌232
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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曉鐘 創刊号 | 1946年 | 曉社 | 雑誌一般 |
「綜合雑誌」。巻頭に、津田左右吉の「日本の文化の現状について」、中ほどに東畑精一の「白菜」、巻末に川端康成の「雪國抄」がある。「雪國抄」は、現在の「雪国」の結末部に近い箇所で、本誌がその初出であるが、直前の丹羽文雄「八月十五日」が切り取られていて、最初の一頁が欠落している。
目録連番 一般雑誌403
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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真実 創刊号 | 1946年 | 協託会機関部 | 表紙:川端龍子 | 雑誌一般 |
菊池寛の随筆「無題」、古川緑波の「餘興ありき」、川上三太郎の「川柳風俗手帖」などがある。「映画☆演劇」では、市川歌右衛門主演「殴られたお殿様」や、原節子主演「緑の故郷」などが紹介されている。全体に写真が多く、現在のいわゆる「週刊誌」に近い。
目録連番 一般雑誌75
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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マドモアゼル 創刊・九月号 | 1946年 | スタア社 | 表紙:伊藤龍雄 | 雑誌一般 |
グラビアの先頭は高峰秀子。「編輯後記」によれば、「お嬢様方のための教養の雑誌」である。服飾・ファッションのページもあるにはあるが、巻頭にあるのは「アメリカに於ける婦人の地位」、続いて「原子力の話」と、今の感覚で見ると、文字が多くて硬い印象である。
目録連番 一般雑誌493
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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性文化 第一号 | 1947年 | 畝傍書房 | 表紙:ボツティチエリ | 雑誌一般 |
田村文庫には、「肉体作家」と呼ばれた田村らしく、性に関する資料が若干含まれていて、本誌はその一つである。「創刊の辞」には、「性の問題を解放し、...眞摯な科学的研究をすゝめる」とある。今の感覚で見ると、その言葉通り、学術的印象が強い。目次には、北川冬彦、中野好夫らの名前が見える。
目録連番 一般雑誌557
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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東京 創刊号(「新生」改題) | 1947年 | 新生社 | 表紙:宮本三郎 | 雑誌一般 |
当時の標準的な月刊雑誌。巻頭に美しい女性のグラビアが数頁ある。目次には、徳川夢聲・菊田一夫・斎藤茂吉・久米政雄・吉川英治・尾崎士郎・林房雄らの名前が見える。小説の分量は多いが、全体的には、かなりくだけた、肩の凝らない内容である。
目録連番 一般雑誌504
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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世間 新年号(「トラベラー」改題) | 1948年 | 世間書房 | 表紙:寺島紫明 | 雑誌一般 |
小説が主体の読み物を中心とする雑誌。目次には、徳川夢聲・尾崎士郎・山岡荘八・藤澤桓夫・双葉十三郎らの名前が見える。横山泰三の四コマ漫画の題名は「肉体の門」。前年3月に発表されたこの田村作品が、いかに広く世間に知られていたかがよくわかる。
目録連番 一般雑誌641
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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富士 新春復刊特大号 | 1948年 | 世界社 | 表紙:志村立美 | 雑誌一般 |
1941年末に廃刊された「富士」の復刊号。「復刊の辞」には、「大衆奉仕を目標とする『富士』は、俗中の俗に徹し、...新日本再建の一本路を、堂々と行進しようといふのである」とある。他誌と同様、小説の比率が高いが、巻頭には津島惠子など、女優のグラビアを載せるなど、軟らかい内容となっている。
目録連番 一般雑誌118
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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カーニバル 創刊号 | 1948年 | ロマンス社 | 表紙:高野三三男 | 雑誌一般 |
目次には、田村の小文「淫賣して何故悪いか」があるが、頁が欠落している。読み物を中心とした雑誌であるが、他誌に比べ、文芸色は弱く、かなりアダルトな内容である。「肉体の終宴」という小説や、オチに「肉体の門」が使われた「笑話」が載せられるなど、本誌にも「肉体の門」の流行があらわれている。
目録連番 一般雑誌506
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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千一夜 創刊号 | 1948年 | 明星社 | 表紙(原画):ドラクロア | 雑誌一般 |
「編輯ノート」には、「最も楽しい、最も美しい雑誌をつくることに心をつくした」とあるが、今見ると、単にけばけばしい印象が強い。目次には、北條誠・井上友一郎・寺崎浩・徳川夢聲らの名前が見える。
目録連番 一般雑誌608
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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花形世界 創刊号(「松竹歌劇」改題) | 1948年 | 松竹出版部 | 表紙:原正治郎 | 雑誌一般 |
「編輯後記」には、「各界花形のロマンスを中心に...健全な家庭娯楽雑誌のニュー・スタイルです」とある。グラビアには、長谷川一夫・山田五十鈴などの映画俳優の他、皇族の秩父宮殿下やぷろ野球の別當薫・水泳の古橋廣之進らが見える。目次には他に、西條(西条)八十の小説「若き日の旅愁」が見える。
目録連番 一般雑誌575
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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日光 九月創刊号 | 1948年 | 同志社 | 表紙:宮本三郎 | 雑誌一般 |
「創刊の言葉」に、「知識、情熱、信念の各栄養を吸収して頂くような完全な食べ物である雑誌をつくりたい」とあるとおり、内容の多彩さに特色がある。「各界噂話」では、映画「肉体の門」の予算についてや、田村のニセ者が新宿で豪遊していた話などが載っていて、当時の田村の「時の人」ぶりがよくわかる。
戦後すぐに創刊・復刊された文芸雑誌
目録連番 一般雑誌510
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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素直 第一輯 | 1946年 | 赤坂書店 | 雑誌文芸 |
編集人は外村繁、同人には井伏鱒二・坪田譲治・太宰治・中谷孝雄らがいる。本号には、志賀直哉「兎」・三好達治「沖の島」・梅崎春生「桜島」などの作品を収めている。本誌は、二度の中断を経て1960年まで、全14冊刊行された。
目録連番 一般雑誌636
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
---|---|---|---|---|
風雪 創刊号 | 1947年 | 風雪社沢本書房 | 田村泰次郎同人 | 雑誌文芸 |
同人には田村・石川達三・丹羽文雄らがいる。「編輯後記」の、「七八年も戦線にあつた青年たちは戦争を描くより他に文学の道はあるまい。戦争物、暴露物と片づけ去る不親切を捨てゝ、戦争の中でいかに人間を観てゐたかに眼を向けられるべきである。」という寺崎浩の文章は切実である。1950年に終刊した。
目録連番 一般雑誌582
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
---|---|---|---|---|
日本小説 五月創刊号 | 1947年 | 大地書房 | 表紙:川端龍子 | 雑誌文芸 |
本号には、太宰治「女神」をはじめ、丹羽文雄「人間模様」、高見順「深淵」、林芙美子「肺が歌ふ-放浪記第三部-」などの作品を載せている。田村の名も武者小路実篤や火野葦平らとともに、「六月号予告」の「執筆者」の中に見える。1949年まで全21冊が刊行された。
目録連番 一般雑誌577
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
---|---|---|---|---|
肉体 第一号(「曉鐘」改題) | 1947年 | 暁社 | 表紙:里見勝藏 | 雑誌文芸 |
冒頭にある「肉体の宣言」という一文に、「われわれは...肉体から出発し、肉体をもつて思惟し、一切を肉体と対決させる」とある。「本号には、坂口安吾「桜の森の満開の下」をはじめ、火野葦平「廃墟」、織田作之助「夜光虫」、柴田錬三郎「自我の形成」などの作品を載せている。1948年まで、全4冊が刊行された。
目録連番 一般雑誌902
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
---|---|---|---|---|
歴程 復刊第一号 | 1947年 | 十字屋書房 | 雑誌文芸 |
編輯者は草野心平である。1935年の創刊当時から同人として編集に携わっていた草野は、戦後の復刊にも大いに寄与した。本誌には、宮沢賢治・高橋新吉・金子光晴・八木重吉および草野らの作品を載せている。本誌からは数多くの詩人が世に出ている。
目録連番 一般雑誌649
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
---|---|---|---|---|
不同調 復活第一号 | 1947年 | 不同調社 | 雑誌文芸 |
1925年〜1929年にかけて出されていた「不同調」の復刊号で、評論を主体としている。本号には、戦前にも本誌に寄稿していた青野季吉の他、渋川驍、野口富士男、江口榛一などが文章を載せている。本号については『日本近代文学大事典 第五巻 新聞・雑誌』(1977年 講談社)には記載がない。
目録連番 一般雑誌743
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
---|---|---|---|---|
文芸復興 創刊号 | 1947年 | 交文社発行日産書房発売 | 雑誌文芸 |
同題の文芸誌は戦前にも2誌存在したが、本号とは別物である。本号では、河上徹太郎・小林秀雄・久米正雄・川端康成・亀井勝一郎・中村光夫が、「私小説」や「第二芸術論」などについてパネルディスカッションを行なっている他、草野心平の詩などを載せている。1948年まで全3号が刊行された。
目録連番 一般雑誌338
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
---|---|---|---|---|
CENDRE 第一号 | 1948年 | VOUクラブ発行アサギ書房発売 | 表紙:北園克衛 | 雑誌文芸 |
編集兼発行者は北園克衛である。北園主宰の詩誌「VOU]が改題されたものである。6冊発刊された後、再び「VOU」に改題されている。本号には、北園克衛「アメリカのYOUNGER GENERATION」、黒田三郎「精神の岐路」、田村隆一「秋」などが載せられている。
目録連番 一般雑誌470
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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序曲 第一輯 | 1948年 | 河出書房 | 雑誌文芸 |
編集者は椎名鱗三である。同人には、埴谷雄高・武田泰淳・梅崎春生・野間宏・島尾敏雄など、いわゆる「戦後派」作家が並んでいる。「座談会 小説の表現について」は、埴谷・武田・梅崎・野間・椎名に三島由紀夫・中村真一郎・寺田透が参加し、酒も入っての意気盛んな議論が載せられている。本誌は本号で終刊している。
目録連番 一般雑誌349
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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小説界 復刊号 | 1948年 | 小説界社 | 表紙原画:梅原龍三郎 | 雑誌文芸 |
目次には、石坂洋次郎・舟橋聖一・獅子文六・丹羽文雄・阿部知二・中野好夫・久米正雄などの名前が見える。田村も、同年、本誌に「情婦」を載せている。本号ではカットを川端龍子らが描き、表紙ともあいまって、豪華な印象の文芸雑誌である。
目録連番 一般雑誌606
書名 | 刊年 | 発行所 | 備考1 | 備考2 |
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方舟 創刊号 | 1948年 | 河出書房 | 雑誌文芸 |
本誌は、中村真一郎・福永武彦・加藤周一ら、文学グループ「マチネ・ポエティク」のメンバーが主体となり創刊した。同人には他に矢内原伊作・森有正らがいる。本誌には同人全てが、評論や詩・小説を載せている。本誌は1951年までに終刊した。
展示案内
平成15年10月10日(金曜日)から11月3日(月・祝)
はじめに
戦後、『肉体の門』で一躍有名になった、三重県四日市市出身の作家・田村泰次郎が亡くなって、この秋で満20年になります。その蔵書と遺品約九千点は、平成5年、田村美好夫人より当館に寄贈されました。
翌6年には「田村泰次郎文庫目録」が作成され、そのすべてが当館で閲覧できるようになり、翌7年には当館2階文学コーナーで、企画展「田村泰次郎再発見」が開催されました。
今回の企画展では、その時取り上げられることの少なかった、田村文庫の一般図書と一般雑誌の中から、「逸品」と言うべき貴重な資料を、よりすぐって展示したいと思います。田村と交流のあった作家や著名人から田村に贈呈された署名本や、戦後のさまざまな雑誌類、また、戦争中の出版物などを多く含むこれらの蔵書は、田村の人柄や業績を示す他、「昭和」という激動の時代を今日に伝える貴重な資料であると言えます。
戦前・戦中の資料について
田村は、早稲田大学に入学した昭和6年前後から、文学活動を始めていました。卒業後、昭和15年に陸軍に応召されるまでの、新進作家・批評家として活躍していた田村の姿を、当時の署名贈呈本からうかがい知ることができます。他にも、田村が収集していたと思われる、文学史的ないしは歴史的な出版物が、少なからず存在します。これら当時の貴重な資料を、あわせて紹介したいと思います。
『西國立志編』 スマイルズ著 明治24年 再版
『詩集 日食』 高橋新吉著 昭和9年
『転落の詩集』 石川達三著 昭和15年
「朝日新聞 東京 縮刷版 昭和16年12月號」 昭和17年
戦後の資料について
戦後、21年に中国から帰国した田村は、文学活動を再開し、翌年に『肉体の門』で一躍流行作家になります。田村文庫の一般雑誌には、その頃創刊・復刊された多くの雑誌の創刊号があります。それらは、内容だけでなく、デザインや紙質も含めて、戦後間もない頃の日本の姿を如実に示す歴史的資料と言えます。当時の世相を象徴する資料として、一般図書の中にある当時出版された単行本などとあわせて紹介します。
また、田村の文名が上がるにつれて、署名贈呈本も、戦前と比べてより多く、多彩になってきます。当時の既成作家から新進作家に至るまで、昭和の文学史を飾る数多くの名をそこに見る事ができます。さまざまな筆跡や個性的な書きぶりを示すそれらの署名は、有名作家や著名人たちを、歴史上のはるか遠い存在ではなく、生身を持った身近な存在として、私たちに感じさせてくれます。それと同時に、文学界や美術界において多くの要職を歴任した田村の交流の幅広さ、スケールの大きさも、感じとる事ができるように思います。
「曉鐘 創刊號」 昭和21年5月 曉社
「素直 第一輯」 昭和21年9月 赤坂書店
『歌集 白き山』 斎藤茂吉著 昭和24年
『眞贋』 小林秀雄著 昭和26年
三重県関係の資料について
三重県ゆかりの作家の本や、三重県で出版された戦前戦後の雑誌など、貴重な資料を何点か展示します。三重県の文学史・文化史の一側面をご覧いただけると思います。
『月仙雑纂』 月仙著 編者・編年未詳
『郷土富田』(「古茂里 五号」) 昭和6年8月
於茂千也函蝠堂
『鬼の言葉』 江戸川乱歩著 昭和11年
「伊勢文学 第八号」 昭和22年8月
伊勢文学グループ
さいごに
田村文庫の「一般図書」「一般雑誌」は、「昭和」という時代が、当時の姿そのままで残っている貴重なコレクションであり、三重県民の大きな財産であると言えます。今回の展示で、その魅力と価値を存分に味わっていただきたいと思います。