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第29回 奥の細道の諸本

当館が所蔵するさまざまな「奥の細道」について展示・紹介を行っています。

  • 展示期間 平成13年6月1日(金曜日) から 平成13年7月8日(日曜日)
  • 展示資料

展示資料一覧

資料名 収録書名 出版者 出版年
与謝蕪村筆 奥の細道画巻 『奥の細道画巻』(全2巻・解説釈文) 郷土出版社

1989年

五升庵蝶夢編 芭蕉翁絵詞伝 再摺本 芸艸堂

1989年

井筒屋本 おくのほそ道 『奥の細道』 井筒屋庄兵衛 不明
寛政版 おくのほそ道 『奥の細道』 洛陽:蕉門書林 1789年
素龍本 おくのほそ道 複製 『素龍本奥の細道』 靖文社 1948年
蝶夢 宰府紀行 明和9年(1772) 『古典俳文学体系 14』 集英社 1977年 
野坡本 おくのほそ道
※影印
『芭蕉自筆奥の細道』 岩波書店 1997年
曾良本 おくのほそ道
※影印
『天理図書館善本叢書 和書の部 第10巻 芭蕉紀行文集』 天理大学出版部 1972年

(上記資料はすべて当館所蔵です。閲覧可能ですが、和古書についてはご本人と確認できるものが必要です。)

資料説明

与謝蕪村筆 奥の細道画巻 上下2巻(重要文化財 逸翁美術館蔵) 複製

蕪村は生涯に約10点の『奥の細道画巻』を制作したことが残された書簡の記事などから知られるが、現存するその確かなものは僅かに3点という。この画巻は、安永8年(1779年)冬の制作になり、蕪村64歳の俳画円熟期の作である。 展示は、旅立ちの冒頭と、紀行の終着大垣の部分。

五升庵蝶夢編 芭蕉翁絵詞伝 再摺本

芭蕉伝記の中でも、最も早いもののひとつで、芭蕉顕彰にその後半生をささげた蝶夢によって編集、寛政5年(1793年)に刊行されたもので、基本的な芭蕉伝として知られる。本書はその版木から再摺したもの。展示は、旅中の象潟の図と、旅後の伊賀での越年の記事の部分。

井筒屋本 おくのほそ道 井筒屋庄兵衛刊

素龍本(素龍清書本)により複製した本書の刊行によって、『奥の細道』は広く世に知られるようになった。巻末に、原本の体裁、来歴等を記した無署名の跋一丁を付す。初印は元禄15年(12年とも)であるが、幾度も刷を重ねた。展示の館蔵本もその後刷本の一本。

寛政版 おくのほそ道 井筒屋庄兵衛 橘屋治兵衛刊

井筒屋本に素龍、去来、蝶夢の跋を加えた明和刊本から、無署名の跋を除き、すべてをかぶせ彫りにしたもので、寛政元年(1789年)に刊行されたもの。本書も多く刷次を重ね、広く読まれた。

素龍本 おくのほそ道 複製

井筒屋本(元禄版本)の元となった本で、素龍の奥書(元禄4年)を有する。芭蕉が素龍に清書させ自ら題箋を記して、元禄7年のその没時まで携行所持していたもので、没後、去来に譲られた。『奥の細道』の定稿と言われるものである。巻末に去来の跋一丁を付す。なお、素龍写本には今一本の柿衛本があり、本書は西村本とも称される。

蝶夢 宰府紀行 明和9年(1772年) 橘屋治兵衛刊

芭蕉顕彰に尽くした蝶夢の明和8年の中国・九州行脚の紀行。枡形の体裁は、『奥の細道』に倣ったものである。

野坡本 おくのほそ道 影印 岩波書店

平成8年に紹介され、広く注目をあびた芭蕉自筆の草稿本。元禄版本に「真蹟の書、門人野坡が許に有り」と記された本で、多くの貼り紙訂正がなされ、定稿にいたる推敲の跡を知ることができる。

曾良本 おくのほそ道 影印 天理図書館善本叢書

曾良自筆の旅日記(『曾良旅日記』)と共に、曾良の筆としてあわせて今日に伝来した本で、芭蕉の訂正が加えられている。素龍本の前段階を示す、或は最終稿本ともいわれる。なお、筆写者については諸説がある。